脱毛の歴史を振り返る
人間はいつの時代も美しく着飾りたいという気持ちを抑えることはできません。「美」を求める心や「美しくなりたい」と思う気持ち、それはある意味で本能に基づいたものだということが出来るでしょう。私たち人間は進化の過程で、体毛を失いました。クジャクの羽やライオンのたてがみなどのセックスアピールの元を自然に手に入れることが出来なくなったのです。そのかわり、私たちは、人為的に美しくなる道を歩んだのです。
例えば化粧。宗教的な意味合いも強いですが、先史時代には、既に化粧が行われていたという説があります。クロマニヨン人の暮らしていた洞窟からは装飾品が発見されています。洞窟絵画が残されている事から考えれば、かなりの美意識が発達していたと言えるでしょう。当時から身なりを飾りたてただけでなく、化粧も行われていたという記録がはっきり残されています。
エジプト文明の時代になると、既に化粧が行われていたという記録がはっきり残されています。メソポタミアとエジプト間で行われていた交易品の中に、金額、宝石などと、共に大量の香水、化粧品といった項目が含まれているのです。紀元前2千年ごろの化粧壺が残されてもいます。
その頃すでに脱毛は行われていました。古代エジプト人が仕様していた毛抜きが何種類か、大英博物館に展示されています。大体、紀元前千三百年頃のものとの事でした。
美しさを求める気持ちと脱毛は、今から3千年以上も前から、セットになっていたのです。
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脱毛はいつから始まったの?
日本での脱毛の歴史
江戸時代以前は、顔の脱毛は行われていましたが、ワキの下の脱毛はまだ、行われていなかったようです。ワキノシタを処理するようになったのは、明治時代洋服文化が入ってからだと言われていますが、実際に普及し始めたのは昭和20年代、ノースリーブの服がはやり始めてからと見るのが一般的です。意外と最近なのです。とは言え、昭和30年までは、まだ処理している人の方が少数派だったようです。昭和30年代に入ると、逆に「ワキ毛は野生のセックスアピール」という事で、脚光を浴びたようですが、スグに廃れています。
ワキ毛は99%の人が、何らかの方法で処理をしています。手入れを始めた時期には3つのピークがあるようです。第一のピークは12.3歳、つまり、中学校に入学した時期、第二のピークは15.6歳で高校に入ってからで、第三のピークは高校卒業時だそうですが、年々、処理を始めた時期は低年齢化しており、生え始めてスグと言う回答も増えてきています。
お手入れの理由は、「恥ずかしい」、「エチケット」、「人目が気になる」と社会的な要因がかなり多くの割合を占めています。
その他、「あるといやらしく見える。」などの回答もあり、わき毛は他の体毛と異なり、セクシャルなものという意識がややあるようです。
次に産毛ですが、日本人は一般に「うぶ毛はムダ毛」という考え方をしています。ですから、剃るのは当たり前です。産毛を剃る理由は「すっきりとさせたい。」が大半を占めます。
これは、つまり、ムダ毛はあるだけで気に障る存在という事なのですね。気に障るものは取り去ってしますに越したことはありません。少し前まで、結婚式の日取りが決まると、花嫁になる人は1か月前から美容院に通い、フェイシャル、顔剃り、襟足の処理、ワキ、スネの脱毛とスケジュールを立て、結婚式の日には生まれ変わったように美しくなるというのが常でした。昔、脱毛は常日頃から行うものではなく、特別なときの為に行われるものだったのです。ですから、昔の写真を見て、「当時の女性は垢ぬけていないな」という印象を受けるのはその為です。
「美しくある事」が日常的になった現代では、垢抜けない人はやや下に見られがちです。そうならないために、誰もが美しくなるための努力を惜しまないのです。おそらく未来の人たちが、現代の私たちの写真を見たら、「なかなかいけてるね。昔の人も」なんて言う感想を抱くのではないでしょうか?
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国ごとの脱毛の意識の違い
文化・社会によって「毛」に関する意識は大きく違ってくるでしょう。その意識の違いを見ていきましょう。(以下に例示していくのは、一般論。社会的な風俗の話になります。どの地域でも、ファッションに敏感な若い女性はみな脱毛に励んでいるのが現実です。)
アメリカ・アメリカ大陸の人たちは、ワキは処理していますが、顔や腕、脚などは、余り処理していません。腕、脚は脱色がメインとなっています。顔の脱毛はもっぱら
毛抜きを使用しており、カミソリなどを使用して、剃るという事は少ないとのことです。
ヨーロッパでは、自然な事だからという事で、ワキの下も処理しない人が多くいます。特に北の方、つまり東欧にその傾向が強いようです。オリンピックなどの国際競技イベントの映像を見ると、女性の水泳選手でワキ毛を残しているのは、たいてい東ヨーロッパの選手だという事に気づきます。ワキ毛以外の体毛に関しても、アメリカより無頓着な場合が多いと言えます。
また、顔にカミソリを当てる習慣も現在はないようです。中性からルネサンスにかけて、顔は広いほど美人という風習があったため、かなり上まで額を剃ったり、抜いたりしていたようです。
ですが、20世紀になってくると、顔の産毛はカミソリなどで、剃ることはしないようになり、毛抜きを使用して抜くのが主流になってきました。また、ロシアでは、濃くなった産毛は抜かずに脱色して処理することが多いそうです。
アジアでは脱毛に関する意識はどんな感じでしょうか?中国では、結婚する時に、ムダ毛を処理する程度だそうです。来日している中国人を見てみると以外に腕の毛や足の毛が生えている人が多くないでしょうか?ただし、海外旅行をするような中国の裕福層などになってくると、積極的に脱毛をおこなっています。また、日本に来る旅行の目的の中に脱毛があるくらいです。また、タイでは、ワキの下に毛があること程、恥ずかしい事はないとのことです。アジア人は産毛が濃く、比較的目立つので、日常、カミソリは普通に使用されます。脱毛処理をしていなかった江戸時代から2百余年を経て、今や脱毛は日本の常識になりつつあります。
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「美」はあなたをランクアップさせる
歴史の中に登場する様々な脱毛のエピソードを見てきましたが、今度は社会や地域による脱毛に関する意識の違いを見ていきましょう。
「美しさ」は社会や文化の違いによって定義されます。世界中に様々な美の基準があるのはその為です。
基準は様々ですが、社会の中で「美」がある力を持っていることに変わりはありません。次のような研究データがあります。
「学生たちは、概して美しい人は、興味深く、強く、落ち着いて、控えめで、人好きがして、外交的で、活気に満ちていると考えていた」(ハーシールド著作「美と最良のもの」1972年)
これをハロー効果と言います。ハロー効果とは「一つの抜きん出た特質のために、その人全体の価値が過大評価されること」。「美」は一つの抽んでた特質として認識されています。
「美」を手に入れることは、社会的にもあなたをランクアップさせる効果があるのです。
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髪と体毛は対立する、脱毛の社会学
美しくありたいと願う女性が、まず一番最初に気にするのは、「顔」でしょう。そして、その次が「髪」、髪の手入れの為の品物(シャンプー、コンディショナー、スタイリング剤、ブリーチなど)の売上高は、化粧品・美容用品産業全体の25%に達しているといいます。髪は色々とスタイルを変えることが出来る為、ファッションの中心の一部をなしている場合が少なくありません。髪を美しく仕上げることは、女性にとって重要なことの一つなのです。髪は女性の象徴です。
ある服飾アドバイザーは、「女性は髪がなければ、決して女性ではあり得ない」と述べています。(ヘミングウェイ著「おしゃれな女達」1979年)長い髪の女性が、そのことだけで女らしいと言われるのは、髪が女性を象徴しているからと言う理由があるからなのです。
反対に男性は、髪にそれほど注意を払いません。短い髪が男らしいと表現され、反対に体毛はあった方が、男性的であると言われます。
「髪と体毛は反比例する」という説があることをご存知でしょうか?伝統的に、男性は頭髪と髪の毛を最小限に止めて、体毛を最大限に利用しようとし、女性は頭髪を最大限に利用し、体毛は最小限にとどめようとします。
毛髪は一種のセックスシンボルです。男性は女性の美しい髪の毛に魅了され、女性は男性のたくましい体毛に、魅了されるのです。(この関係は社会によって大分変ってきます。たとえば、現在の日本では、男性の体毛はセックスアピールの対象になっておらず、逆に体毛が無い方が人気が高いようです。男性が女性化しているという事なのでしょうか?)
ファッションに敏感な女性は、頭髪を磨き上げるのと同じだけの時間と費用を掛けて、要らない体の毛を取り除きます。「頭髪があることが女性の象徴である」のと同義で、「ムダ毛がないこと」は女性の象徴なのです。
女性化の傾向が進みつつある男性にも、同様のことが言えるでしょう。
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